「不労所得 やめとけ」と調べる方は、たいてい 2通りのどちらかです。すでに誰かに止められて、その理由が知りたい方。あるいは、自分でも薄々うまくいかない気がしていて、その感覚が当たっているか確かめたい方。
この記事は、止める側の言い分を数字で確かめるところから始めます。そのうえで、やめた人が何でやめたのかを見て、最後に「どういう条件なら成り立たないのか」を並べます。すすめる記事ではありません。
こんな方にオススメ
- ●誰かに「やめとけ」と言われて、その理由を確かめたい
- ●うまくいかない気がしていて、その感覚が当たっているか知りたい
- ●すすめる記事ではなく、成り立たない条件のほうを先に見たい
この記事を読むと…
- ●「やめとけ」の3つの意味を分けて、自分に当たるものだけ見られる
- ●公表されている廃業の数字が分かる
- ●始める前に確かめられる制約と、続くかぎり発生する手間が分かる
「やめとけ」には、3つ別の意味が混ざっている
同じ「やめとけ」でも、言っている中身が違います。混ざったまま受け取ると、自分に当てはまるのかどうかが分かりません。
| 言い方 | 中身 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 「そんなうまい話はない」 | 労力ゼロで入り続ける収入は無い、という意味 | 実際にかかる手間を数える |
| 「失敗する人が多い」 | 続かない人の割合が高い、という意味 | 公表されている数字で確かめる |
| 「お前には向いていない」 | 条件の話。人によって答えが違う | 条件を書き出して照らす |
1つ目は、ほぼ正しいと言っていいと思います。2つ目は、数字が出ている分野なら確かめられます。3つ目は、他人には決められません。
以下、2つ目から見ていきます。
やめている人は、実際に多い
住宅を人に貸して宿泊料を受け取る民泊は、届出の件数が国から公表されています。住宅宿泊事業の届出件数は累計67,932件、うち事業廃止件数が24,895件、いま届け出されている住宅は43,037件です。
令和8年9月15日時点の数字です。民泊そのもののしくみから確かめたい方は、民泊とは簡単に説明します|定義・仕組み・メリット・リスクを5分で理解する入門ガイドを先にご覧ください。
届け出た人のうち、およそ3分の1がやめています。「失敗する人が多い」という言い方は、この分野については数字の裏づけがあります。止める側の2つ目の言い分は、当たっています。
ただし、ここから先の受け取り方が2つに分かれます。「3分の1がやめるなら危ない」と読むか、「やめた理由が分かれば避けられる」と読むか。廃止の理由そのものは、この統計には書かれていません。これは確かめられていないことなので、推測で埋めません。
代わりに言えるのは、制度の側に、始める前に確かめられる制約がはっきり書かれているということです。次の章がそれです。
始める前に確かめられる制約が、思ったより多い
国内で民泊を営むには、次の3つのいずれかを選びます。
- 旅館業法の許可
- 国家戦略特別区域法の認定(いわゆる特区民泊)
- 住宅宿泊事業法の届出(2018年6月15日施行)
3つめの届出で始める場合、日数に上限があります。
- ●宿泊料を受けて人を宿泊させる日数の上限は、1年間で180日
- ●数える期間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで
- ●日数は届出住宅ごとに数える。事業者が途中で変わってもカウントは引き継がれる
- ●180日を超えて宿泊させる場合は、旅館業法の許可が必要になる
- ●自治体の条例で、さらに期間を制限していることがある
出典:住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?(観光庁)/よくあるご質問(観光庁)
ここで効くのは、下の2行です。
CAUTION
数える期間は暦年ではありません。毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年です。暦年で計画すると日数が足りなくなります。条例の上乗せは全国一律ではないので、物件のある市区町村を自分で見るしかありません。
数える期間が4月1日正午からの1年であることを知らずに、暦年で計画すると日数が足りなくなります。そして条例の上乗せは全国一律ではないので、物件のある市区町村を自分で見るしかありません。
つまり、年間の営業できる日数には上限があり、その上限は自分で決められません。「満室なら毎月いくら」という計算は、この上限を超えた前提になっていることがあります。ここは始める前に確かめられる種類の制約です。
物件の側の条件は、民泊を始める条件とは|建物種別・契約形態・ローン・用途地域の4つで決まるに整理しています。
「不労」ではない部分が、どこにあるか
1つ目の言い分——「労力ゼロの収入は無い」——を確かめます。制度の側に、続けるかぎり発生する手間が書かれています。
定期報告
住宅宿泊事業者には報告の義務があります。2月・4月・6月・8月・10月・12月の各15日までに、前2か月分の提供日数・宿泊者数などを報告します。年6回、必ず来ます。
税の手続き
給与をもらいながら行う場合、確定申告が必要になる条件は決まっています。たとえば、1か所から給与を受けてその全部が源泉徴収の対象である人は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると申告が必要です。
出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)
ここでよくある読み違いがあります。20万円は収入ではなく所得(収入から必要経費を引いたもの)です。不動産の収入については、総収入金額から必要経費を引いたものが不動産所得になります。総収入金額には、賃貸料収入のほか名義書換料・承諾料・更新料・頭金、返還が不要な敷金や保証金、共益費名目で受け取る電気代・水道代・掃除代が入ります。
出典:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)(国税庁)
運営の手間
宿泊する人がいる以上、連絡・清掃・鍵の受け渡し・設備の不具合への対応が発生します。ここは外に任せることもできますが、任せれば手数料が出ていくので、収支の計算が変わります。どちらを選ぶかは、運営代行に任せるか、自分でやるかに整理しています。
結論として、1つ目の言い分も当たっています。手間はゼロになりません。減らせるのは「自分がやる手間」で、「発生する手間」そのものではありません。
向いていない条件を、先に並べる
3つ目の言い分(向いていない)は、条件の話です。他人には決められないので、条件のほうを書き出します。当てはまる数が多ければ、いまは向いていません。
- 手元の資金が、始めるのにぎりぎり。稼働していない期間も家賃と光熱費は出ていきます。売上が半分の月をしのげない資金では、判断が追い込まれます
- やめるときの費用を計算に入れていない。原状回復、家具の処分、契約期間が残っているときの違約金。入れていないと、やめる判断が遅れます(やめるときにかかる費用と、手順)
- 年6回の報告と、確定申告を自分でやる前提になっていない。任せるなら費用が増えます
- 物件を先に決めてしまった。条例・管理規約・用途地域は、物件が決まる前に確かめるものです。順番が逆だと、使った費用が戻りません
- 収入が入り始める時期を、早く見積もっている。届出から運営開始までのあいだも、固定費は出ていきます
- 「不労」であること自体が目的になっている。手間がゼロにならない以上、途中で割に合わないと感じて止まります
逆に、年間の営業日数に上限があることを前提に計算し、やめる費用まで見込んだうえで、それでも数字が合うなら、「やめとけ」はあなたに向けた言葉ではありません。その場合に確かめるのは、一般論ではなく自分の物件の数字です。
他の手段と比べたい場合は、不動産投資と賃貸型民泊は、何が違うのかをご覧ください。
よくある質問
3分の1がやめているなら、やめたほうがよいのではないですか
その読み方も成り立ちます。ただし、廃止の理由は統計に書かれていません。分かっているのは件数だけです。言えるのは「続かなかった人が多い分野である」ということまでで、「誰がやっても続かない」という意味にはなりません。
放っておいて入り続ける収入は、本当に無いのですか
民泊については、制度の側に年6回の報告義務があり、税の手続きもあります。手間がゼロになることはありません。自分がやる手間は外に任せて減らせますが、そのぶん費用が出ていきます。
180日しか営業できないなら、割に合わないのでは
割に合うかどうかは、家賃・単価・稼働で変わるので一般論では言えません。確かめる順番としては、固定費をまかなうのに必要な宿泊日数を出して、それが上限に対して余裕のある数字かを見るのが先です。余裕がないなら、その物件では成り立ちません。なお、180日の上限は届出で営む場合のもので、旅館業法の許可や特区の認定では条件が変わります。
副業として会社に知られませんか
勤務先の就業規則と、申告のしかたによって変わる話なので、ここでは一般化しません。確定申告が必要になる条件そのものは国税庁のページに書かれています(上記 No.1900)。就業規則は、ご自身の勤務先のものを確かめてください。
まとめ
- ●「やめとけ」には3つ別の意味が混ざっている。うまい話は無い/失敗が多い/向いていない
- ●「失敗が多い」は数字の裏づけがある。届出67,932件のうち24,895件が廃止(およそ3分の1)
- ●ただし廃止の理由は統計に書かれていない。そこは確かめられていない
- ●「うまい話は無い」も当たっている。年6回の定期報告と税の手続きは、続けるかぎり発生する
- ●一方で、年間の営業日数の上限(180日・4月1日正午起点・条例の上乗せ)は、始める前に確かめられる制約
- ●「向いていない」は条件の話。資金の余裕・やめる費用・物件を決める順番で、ほぼ決まる
「やめとけ」が自分に当たる言葉なのかは、一般論では決まりません。上に並べた条件に照らすところからです。数字のほうを確かめたい場合は、収支シミュレーターに家賃・単価・稼働率を入れると、月いくら残るかがその場で出ます(登録は要りません)。
- 条件に当てはまる数が多く、いま進めてよいか迷っている
- 資金の余裕・やめる費用・物件を決める順番を、まとめて見直したい
- 他人の「やめとけ」ではなく、自分の条件で判断したい


