民泊で月いくら稼げるか、具体的な数字が見えないまま検討を止めている会社員は少なくありません。家賃・光熱費・清掃費を差し引いた「手元に残る金額」が分からないと、始めるかどうかの判断ができないのは当然です。
この記事では、賃貸型民泊(転貸民泊)を本業と並行して運営する場合の収支構造を、物件タイプ・立地別のシミュレーションを交えて具体的に示します。「机上の利回り」ではなく、会社員が実際に手を動かせる時間と費用感を前提にした試算が、判断の出発点です。
こんな方にオススメ
- ●民泊の収益が本当に出るかどうか、数字ベースで確認したい会社員・公務員の方
- ●物件を借りて転貸する「賃貸型民泊」の収支イメージがまだつかめていない方
- ●副業として現実的に成立するかを、コストも含めて比較検討したい方
この記事を読むと…
- ●民泊の収入・支出の全体像と、物件別のシミュレーションの立て方がわかる
- ●都市部・地方・戸建て・小型物件それぞれの収支イメージが比較できる
- ●自分の想定物件が民泊向きかどうかを判断する基準が手に入る
民泊で本当に稼げるのか―収益は「物件次第」が現実
民泊の収益は「立地・物件タイプ・稼働率」の3要素でほぼ決まります。同じ民泊でも、都市部の駅近ワンルームと地方の郊外戸建てでは、想定できる月収が数倍変わることは珍しくありません。まず全体像を把握してから個別の数字に入る方が、シミュレーションの精度が上がります。
民泊収益の「相場感」をどう読むか
Airbnbなどの宿泊予約プラットフォーム(OTA)が公表しているデータによると、日本国内の民泊ホストの月間収益は物件・エリアによって大きく異なります。ただし、OTA側が示す「平均収益」は稼働率や物件条件のばらつきが大きく、そのまま自分の物件に当てはめると過大評価になりがちです。
現実的な目線では、稼働率50〜60%を前提にした手取り計算が出発点として適切です。宿泊単価が高くても稼働率が低ければ月収は伸びず、逆に稼働率が高くても単価が低すぎると経費を引いた後の利益が薄くなります。
賃貸型民泊の場合、自分で物件を購入するわけではないため初期リスクは抑えられますが、その分「家賃コスト」が固定費として毎月発生します。この家賃をカバーした上でさらに利益を出せるかどうかが、収支シミュレーションの核心です。
収益シミュレーションを構成する3変数
民泊収益のシミュレーションは、次の3変数で構成されます。①1泊あたりの宿泊単価、②月間稼働日数(稼働率)、③月間の固定費合計です。この3つが決まれば、基本的な収支は計算できます。
稼働率は立地や季節、プロフィール評価によって変動します。一般的に都市部の観光地周辺では年間を通じた需要が見込める一方、地方の観光地は繁閑差が大きくなる傾向があります。年間平均稼働率50%は保守的な試算の基準として広く使われています。
POINT
「民泊は儲かる」「儲からない」の議論の多くは、稼働率の前提が違うまま比較されています。シミュレーションは必ず「稼働率〇%の場合」を明示した上で行いましょう。
民泊の収入と支出の構造―想定外の経費を把握する
民泊経営で「思ったより手残りが少なかった」という声の多くは、支出の全体像を把握できていなかったことが原因です。収入から引かれる費用の種類と金額感を先に整理しておくことで、シミュレーション精度が上がります。
収入の内訳:宿泊料+追加収益
民泊の主な収入源は宿泊料です。ただしOTAを通じて予約を受ける場合、プラットフォーム側のホスト手数料が差し引かれた金額が実際の収入になります。手数料率はプラットフォームによって異なり、たとえばAirbnbのホスト手数料は通常3%ですが、他のOTAでは15%前後になる場合もあります。詳細は各プラットフォームの公式規約でご確認ください。
追加収益としては、清掃費の一部をゲストに負担させる「クリーニング料」の設定、早期チェックインや遅延チェックアウトへのオプション課金なども選択肢に挙げられます。ただし初期段階ではシンプルな宿泊料ベースの計算から始める方が管理しやすいでしょう。
支出の種類と月間の目安金額
賃貸型民泊では、以下の支出項目が発生します。物件の家賃が最大の固定費であり、これをどう設定するかが収支の鍵を握ります。各費用の目安は下表を参照してください。
| 費用項目 | 内容 | 目安(月額) |
|---|---|---|
| 家賃(転借料) | 大家または管理会社に支払う賃料 | 物件による(収入の40〜60%が目安) |
| 清掃費 | チェックアウト後の清掃代行費用 | 1回3,000〜8,000円程度 |
| 光熱費・Wi-Fi | 電気・水道・ガス・インターネット | 1〜3万円程度 |
| OTA手数料 | AirbnbなどのプラットフォームへのOTA費用 | 売上の3〜15%程度 |
| 消耗品費 | アメニティ・リネン・洗剤等の補充 | 2,000〜5,000円程度 |
| 運営代行費(任意) | 予約対応・ゲスト対応などの委託費用 | 売上の10〜20%程度 |
CAUTION
清掃費は稼働日数に連動して変動します。稼働率が上がるほど清掃回数も増えるため、「売上が増えると同時に清掃コストも増える」点を忘れずシミュレーションに組み込んでください。
「手取り時間」という見えにくいコスト
会社員が民泊を副業として運営する場合、金銭的コスト以外に時間コストも重要な変数です。予約管理・ゲスト対応・チェックイン案内・消耗品補充といった作業は、外部に委託しない限り自分の時間を使います。
運営代行サービスを利用すれば週数時間程度まで圧縮できますが、その分費用がかかります。逆に自分ですべて対応すれば利益率は上がる一方、本業との両立が難しくなります。「月にどれだけの時間を使えるか」を先に決めておくことが、代行委託の範囲と費用のバランスを決める出発点です。
時間コストの目安については、会社員が運営に使う時間はどれくらいかでより詳しく解説しています。
シミュレーションの正確な立て方―立地・物件タイプ別の計算ステップ
民泊の収支シミュレーションは、いくつかの前提条件を決めてから数字を組み立てる順序で進めます。逆算せずに「いくら稼げるか」から始めると、楽観的な試算になりがちです。コストを固定した上で、必要な稼働率・単価を逆算する方が現実的な判断につながります。
- 1 月間固定費を確定する
家賃・光熱費・Wi-Fiなど、稼働に関わらず発生する費用を合計します。これが「損益分岐点の基準」になります。
- 2 変動費の単価を把握する
清掃費・消耗品費・OTA手数料は稼働日数に連動します。1泊あたりのコストを計算しておきます。
- 3 エリアの相場単価を調査する
AirbnbやNestayなどのプラットフォームで、同エリア・同規模の類似物件の宿泊単価を確認する必要があります。
- 4 損益分岐点の稼働日数を計算する
「固定費÷(1泊単価-1泊あたり変動費)」で計算します。この日数以上稼働できるエリアかどうかの判断が重要です。
- 5 目標利益から逆算する
月に手元に残したい金額を決め、必要な稼働日数・単価を逆算します。現実的な稼働率(40〜65%)の範囲に収まるかを確認しましょう。
損益分岐点の計算式
シミュレーションの核心は損益分岐点です。「固定費÷(単価-変動費)=損益分岐稼働日数」という計算式が基本になります。この日数が月30日に近い数字になる場合、その物件では利益を出すのが構造的に難しいと判断できます。
たとえば月間固定費が12万円(家賃10万円+光熱費2万円)、1泊単価が8,000円、1泊あたり変動費が3,000円(清掃費2,500円+消耗品500円)の場合、損益分岐点は「120,000÷(8,000-3,000)=24日」になります。月24日以上稼働して初めて固定費を回収でき、それ以降が利益になる計算です。
OTA手数料に売上の10%)を加味すると実際の手取り単価は7,200円になるため、損益分岐点は「120,000÷(7,200-3,000)=約28.6日」となります。このように手数料を含めた計算が重要です。
稼働率の現実的な前提をどう置くか
シミュレーションの楽観・悲観の差は、多くの場合「稼働率の前提」にあります。開業直後は評価数が少なくOTA内での露出も低いため、稼働率は低めに推移する傾向があります。3〜6ヶ月で評価が積み上がった後に稼働率が安定するのが一般的です。
初年度は稼働率40〜50%、安定後は50〜65%という段階的な前提でシミュレーションを作ると、より現実に近い収支計画になります。強気に70〜80%で計算すると、開業初期に資金繰りが厳しくなるリスクがあります。
INFO
民泊の稼働率は旅館業法上の許可民泊と住宅宿泊事業法(民泊新法)届出物件で、営業可能日数の上限が異なります。新法届出では年間180日の上限があるため、物件の許認可区分によって試算の前提を変える必要があります。
実例で学ぶ収支予測―都市部と地方、戸建てと小型物件の比較
シミュレーションの組み立て方が分かったところで、物件タイプ・立地別の具体的な試算例を見ていきます。以下はあくまで試算の例であり、実際の収益は物件条件・運営スキル・季節によって変動します。参考値として活用してください。
都市部ワンルーム物件のシミュレーション
都市部の駅徒歩10分圏内のワンルームマンション(家賃8〜10万円想定)を民泊に活用する場合、1泊単価を8,000〜10,000円に設定し稼働率50%(月15泊前後)とすると、月間売上は12〜15万円程度になります。ここからOTA手数料・清掃費・光熱費を引くと、利益は月1〜4万円程度が一つの目安といえます。
都市部ワンルームは安定した宿泊需要が見込める反面、家賃が高く利益率が低くなりやすい特徴を持っています。稼働率が60%以上に上がると、利益が一気に改善しやすい構造です。ただし開業初期は評価蓄積に時間がかかるため、収益が安定するまでの期間を見越した資金計画が不可欠です。
初期費用の内訳と相場については別記事で詳しく解説しています。初期投資の回収期間もあわせて試算しておくことをお勧めします。
都市部2LDK物件のシミュレーション
都市部の2LDK物件(家賃15〜18万円想定)を民泊に活用する場合、ファミリーや複数人グループを対象に1泊あたりの単価を高めに設定できることが特徴です。稼働率50%を前提にすると月間売上は25〜35万円程度が見込まれ、家賃・OTA手数料・清掃費などのその他経費(5〜7万円程度)を差し引いた月間利益は3〜10万円が目安となります。
ワンルームに比べて絶対的な利益額が大きい一方、家賃水準も高いため、稼働率が想定を下回ると赤字転落のリスクも相応に高まります。開業初期の稼働率低下期間をカバーできる手元資金を確保した上で検討することが重要です。
地方観光地・戸建て物件のシミュレーション
地方の観光地周辺にある戸建て物件(家賃5〜8万円)を活用する場合、ファミリーや複数人グループを対象に1泊15,000〜25,000円の単価設定が可能になることもあります。稼働率が50%であっても、単価が高いため月間売上は20〜30万円に達する可能性があります。
ただし、地方観光地は繁閑差が都市部より大きい傾向があります。夏や年末年始などのピーク期は高稼働・高単価が期待できる一方、閑散期には稼働率が20〜30%まで落ちることもあります。年間を通じた平均で計算し、閑散期の固定費負担も想定に含めることが重要です。
シミュレーションで注意すべき「見えにくい費用」
収支試算でよく見落とされるのが、以下の項目です。
- 許認可取得にかかる費用(行政書士費用・消防設備工事など)
- 家具・家電・備品の初期購入費(おおむね30〜80万円程度)
- 損害保険・民泊専用保険の保険料
- 確定申告にかかる税理士費用(年1回)
- 空室・無稼働期間中の固定費負担
これらは初期費用または年間費用として発生しますが、月次シミュレーションに月割りで組み込んでおかないと、実際の収益が想定を下回る原因になります。初期費用の扱いについては初期費用は何にいくらかかるのかでまとめています。
シミュレーション結果から判断する―物件の民泊適性を見極める
シミュレーションを組んでみて、自分の想定物件が民泊に向いているかどうかを判断するには、いくつかの指標を組み合わせる必要があります。単純に「利益が出るか」だけでなく、リスクと手間のバランスを含めた総合評価が大切です。
「収益が出る」以前に確認すべき前提条件
民泊を始める前に、まず物件の法的適性を確認する必要があります。住宅宿泊事業法に基づく届出、または旅館業法に基づく許可のどちらが必要かは、物件の用途地域や自治体の条例によって異なります。また、転貸(又貸し)の可否は大家や管理会社の承諾が必要であり、これが得られない物件ではそもそも民泊を始めることができません。
不動産投資と賃貸型民泊の違いについてはこの記事が参考になります。自分で物件を購入する投資型と、借りて転貸する賃貸型では、リスク構造が根本的に異なります。
民泊向き物件の特徴を整理する
- 駅徒歩10分以内、または観光スポット・繁華街へのアクセスが良い
- 転貸・民泊利用について大家の承諾が得られる(または得られる見込みがある)
- 家賃が月間売上予測の50〜60%以内に収まる水準
- 清掃しやすいシンプルなレイアウト(水回りがまとまっている等)
- 近隣に競合物件が多すぎず、差別化できる要素がある
- 自治体の条例で民泊営業が制限されていないエリア
撤退コストも試算に入れる
民泊経営は始めるコストだけでなく、やめるときのコストも把握しておくことが重要です。家具・家電の処分費用、原状回復費用、許可の廃止手続きなどが発生します。
撤退にかかる費用と手順についてはやめるときにかかる費用と手順でまとめています。「始めやすさ」だけでなく「やめやすさ」も含めて検討することが、リスク管理の観点から重要です。
POINT
不動産市況や民泊需要は変動します。「収益が出る」という試算結果も、前提条件が変われば変わります。試算はあくまで判断材料の一つと位置づけ、専門家への相談を組み合わせた意思決定をお勧めします。
まとめ―シミュレーションは「入口」、次の一歩は個別の物件判断
民泊の収支シミュレーションで確認すべき核心は、「家賃コストを回収した上で利益が残るか」と「その稼働率は現実的に達成できるか」の2点です。物件タイプ・立地・許認可区分によって試算の前提が変わるため、汎用的な「平均値」よりも個別の物件条件に合わせた試算が判断の精度を高めます。
また、会社員が副業として民泊を運営する場合は、金銭的な収支だけでなく「本業と両立できる運営体制」を組めるかどうかが継続性を左右します。予約対応・清掃手配・許認可手続きを外部に委託する仕組みを最初から組み込むことで、本業に影響を出さない形で始めることが現実的な選択肢になります。
YADOKARIは、賃貸型民泊の立ち上げから許認可・予約対応・清掃手配まで、会社員が本業を続けたまま始められるよう一括でサポートする体制を整えています。まず自分の物件候補でどの程度の収支が見込めるかを確認したい場合は、収支シミュレーターや副業適性診断を活用してみてください。
- 本業を続けながら給料以外の収入源を作りたい会社員・公務員の方
- 不動産を購入するリスクを負わずに民泊を試してみたい方
- 許認可や運営の手間を外部に任せてスモールスタートしたい方
収支シミュレーション・相談の前に確認しておきたいこと
よくある質問
民泊の収益シミュレーションで、稼働率はどのくらいを前提にすればよいですか?
開業初期(3〜6ヶ月)は40〜50%、評価が安定した後は50〜65%を前提にする試算が現実的です。住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出物件は年間180日の営業上限があるため、最大稼働率は約59%(180÷365×100)になります。強気に70〜80%で計算すると開業初期に資金繰りが厳しくなるリスクがあるため、保守的な前提での試算を先に行うことをお勧めします。
賃貸型(転貸)民泊と物件購入型の民泊、どちらが収益性が高いですか?
一般的に、物件購入型は借入返済が固定費として大きくなる一方、家賃負担がない分の収益性が高まる可能性があります。賃貸型は初期投資が少なくリスクを抑えられますが、家賃コストが毎月発生します。
どちらが有利かは物件価格・賃料水準・稼働率・ローン条件によって変わるため、一概には言えません。両者の違いについては「不動産投資と賃貸型民泊は何が違うのか」をご覧ください。
民泊の収益は確定申告が必要ですか?
会社員の場合、給与以外の所得(民泊収益)が年間20万円を超えると確定申告が必要になります(所得税法上の規定)。民泊収益は事業所得または雑所得として申告し、家賃・清掃費・光熱費などの必要経費を差し引いた後の金額が課税対象になります。税務上の扱いや申告方法については「副業としての確定申告」の記事で詳しく解説しています。
民泊の運営を代行業者に任せると、利益はどのくらい減りますか?
運営代行の費用は一般的に売上の10〜25%程度です。月間売上が15万円の場合、代行費用は1.5〜3.75万円になります。その分の利益は減りますが、本業への影響を最小化できること・対応ミスによるゲストトラブルリスクを軽減できることを考えると、特に開業初期は代行の活用が有効な選択肢になります。
民泊の収支シミュレーターや無料ツールはありますか?
YADOKARIでは、物件候補の条件を入力して収支を試算できる収支シミュレーターを無料で提供しています。家賃・稼働率・宿泊単価を入力すると月間の利益目安を確認できます。また、副業適性診断では民泊運営に適しているかどうかを簡単にチェックできます。
出典
本文中の制度・法令の内容は、上記の一次情報で確かめたものです(2026年11月6日時点)。制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の内容をご確認ください。
