会社員が家賃収入を副業として得るには、物件を買う方法と借りて転貸する方法の2つのルートがあります。前者は数百万〜数千万円の自己資金と融資審査が前提となりますが、後者(賃貸型民泊)は物件を借りて民泊として運営するため、初期費用を大幅に抑えた状態でスタートできます。どちらのルートでも、税務上の取り扱いや就業規則との兼ね合いを事前に把握しておくことが欠かせません。
「不動産で収入をつくりたいが、本業との両立のイメージが湧かない」という段階の方が、次のステップへ踏み出すための判断材料を提供します。
こんな方にオススメ
- ●給与以外の収入源をつくりたいが、何から始めればいいか分からない会社員・公務員の方
- ●不動産を活用した副収入に関心があるが、税務や就業規則への影響が心配な方
- ●本業の時間を削らずに家賃収入を得る仕組みを探している方
この記事を読むと…
- ●家賃収入が税務上どう分類され、副業禁止規定とどう関係するかが分かる
- ●賃貸型民泊という選択肢の仕組みと、一般的な不動産投資との違いが分かる
- ●物件選定から運営開始までのステップと、専門家への相談タイミングが分かる
会社員が家賃収入を副業にできる理由と、現実的な課題
家賃収入は、労働の対価ではなく資産の運用対価として分類されます。この性質が、会社員にとって比較的取り組みやすい収入源とされる理由です。ただし「簡単に稼げる」わけではなく、始める前に理解しておくべき課題も複数あります。
家賃収入が「労働所得」と異なる点
家賃収入は、物件という資産を貸し出すことへの対価です。給与所得や事業所得が「自身の時間・労働」に対する報酬であるのに対し、資産運用の収益は働いた時間と直接連動しません。
この違いが、本業を持つ会社員でも取り組める理由のひとつとなっています。ただし、資産の取得や維持には費用と手間がかかります。
「不労所得」という言葉の印象と、維持コストや管理業務が伴う実態には差があります。
現実的な課題:時間・資金・知識の三重制約
会社員が家賃収入を得ようとするときに直面するのは、時間・資金・知識の三重の制約です。物件の取得や管理には一定の知識が必要で、契約・許認可・確定申告の各プロセスで専門的な判断が求められます。
自分で全て行おうとすると、本業への影響が出るケースもあります。外注・代行サービスを活用して自分が動く範囲を絞るのが、現実的な進め方といえるでしょう。
| 物件を買う場合 | ローン審査・頭金・管理費・修繕積立金など、表面利回りだけでは判断できないコストがある |
| 物件を借りて転貸する場合 | 貸主の転貸承諾を書面で得ることが前提(口頭承諾は後のトラブルになりやすい) |
| 民泊として運営する場合 | 住宅宿泊事業法の届出または旅館業法の許可が必要 |
| 副業禁止規定がある場合でも、不動産所得は「禁止対象外」とされることが多いが、勤め先の規定を必ず確認する |
家賃収入が「副業扱い」になる条件と税務上の分類
家賃収入の税務上の取り扱いは、所有形態と規模によって異なります。会社員が副業として得る場合、不動産所得または雑所得のいずれかに分類されるのが一般的です。どちらに当たるかで、確定申告の方式や損益通算の可否が変わります。
不動産所得と雑所得の分かれ目
国税庁の取り扱いによると、不動産の貸し付けによる収入は原則として不動産所得に区分されます。ただし、規模や形態によっては雑所得として処理されることもあります。
不動産所得と雑所得の最大の違いは、損益通算(赤字を他の所得から差し引く)ができるかどうかです。不動産所得は損益通算が可能ですが、土地取得のための借入金利子部分については通算に制限があります。
| 区分 | 主な条件 | 損益通算 | 確定申告の書類 |
|---|---|---|---|
| 不動産所得 | 建物・土地の賃貸による収入(継続的・反復的) | 可(一部制限あり) | 確定申告書+収支内訳書(青色は青色申告決算書) |
| 雑所得 | 規模が小さく、他の所得区分に当たらない場合など | 不可 | 確定申告書(雑所得欄に記載) |
| 事業所得 | 5棟10室基準を超える規模で事業的に行う場合 | 可(青色申告特別控除あり) | 青色申告決算書(65万円控除には複式簿記が必要) |
詳しい判定基準は国税庁「不動産所得の申告」(nta.go.jp)を参照してください。個々の状況により判定が異なるため、税理士への相談も検討してください。
会社員が確定申告を要するタイミング
給与所得者(会社員・公務員)は、給与所得以外の所得が年間20万円を超えた場合に確定申告が必要です。これは所得税法の規定に基づくもので、家賃収入が少額であっても継続的に発生している場合は年間の合計額を確認する必要があります。
住民税については20万円以下であっても申告が必要な場合があるため、自治体への確認も必要です。確定申告の具体的な手順については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
民泊収入の税区分(賃貸型民泊の場合)
物件を賃借して民泊として転貸する「賃貸型民泊」の場合、収入の性質は不動産の転貸による収益であるため、不動産所得として取り扱われることが一般的です。ただし運営の態様(旅館業に近い実態がある場合など)によっては事業所得として判定されることもあります。自身のケースに合った判断を行うためには、税理士への事前確認が確実です。
INFO
「副業禁止」規定がある会社員でも、不動産所得は「資産運用」として扱われ、禁止の対象外とされるケースが多くあります。ただし「禁止対象外である」と判断するには、自社の就業規則の条文を確認するか、人事部門に問い合わせることが必要です。一律に「OK」とは言い切れません。
就業規則と副業許可:会社員が確認すべきポイント
家賃収入を得ること自体は多くの企業で認められていますが、確認なしに進めることはリスクを伴います。就業規則の副業に関する条文と、勤め先の運用実態を把握することが先決です。
「副業禁止」規定と不動産所得の関係
就業規則に「副業・兼業を禁止する」と明記されていても、禁止の趣旨が「労働力の提供を他社に行うこと」にある場合、不動産賃貸による収入はその対象外と解釈されることがあります。厚生労働省が公表している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(mhlw.go.jp)では、副業・兼業を認める方向性が示されていますが、各社の就業規則の解釈は会社ごとに異なります。条文の文言と、必要であれば人事担当者への確認を組み合わせて判断してください。
公務員の場合の制限と手続き
公務員は、国家公務員法および地方公務員法により、営利企業への従事や事業への従事に制限が設けられています。不動産の賃貸については、一定の規模以下であれば認められることが多く、5棟10室未満であれば許可不要とされるケースが一般的です(人事院規則14-8等を参考に、所属先の服務担当部署で要件を必ず確認してください)。
自治体・省庁によって運用が異なるため、所属先への事前確認が必須です。独断で進めると懲戒処分の対象となることがあります。
副業許可申請のプロセス
副業を認める会社では、所定の申請書を提出して事前許可を得るプロセスが設けられています。申請時には「収入の種類」「物件の規模」「本業への影響の有無」などを明記することが求められる場合があります。申請を経ずに始めて後から発覚するより、透明性を持って進める方が長期的なリスクを抑えられます。
実践ステップ:物件選定から運営開始までの流れ
家賃収入を副業として組み立てるには、物件取得・許認可・運営体制の三段階を順番に整える必要があります。ここでは、賃貸型民泊(物件を借りて転貸するルート)を中心に、会社員が実際に動く順序を整理します。
- 1物件の目利きと転貸承諾の取得
賃貸型民泊では、転貸承諾が貸主から書面で得られるかどうかが最初の関門です。募集図面の段階では転貸可否が明記されていないことが多く、事業用物件を扱う仲介会社を通じて交渉することが現実的なアプローチです。詳しくは不動産投資と賃貸型民泊は、何が違うのかもご参照ください。
- 2事業計画と収支シミュレーションの作成
家賃・管理費・初期費用・運営コストを踏まえた収支計画を立てます。民泊の場合、稼働率によって収入が変動します。
損益分岐点(最低限必要な稼働率)を先に計算し、それを現実的に達成できるエリア・物件かを確認します。初期費用の内訳については初期費用は、何にいくらかかるのかで詳しく解説しています。
- 3許認可の取得(届出または許可申請)
住宅宿泊事業(民泊新法)として運営する場合は都道府県への届出が必要です。旅館業(簡易宿所)として運営する場合は市区町村への許可申請が必要となります。申請書類の準備・提出には数週間〜数ヶ月を要することがあるため、物件契約後すぐに動き始めることが重要です。
- 4内装・備品の整備と予約受付の開始
宿泊用の内装・家具・家電を整備します。民泊として運営する場合は、寝具・調理器具・Wi-Fi等の設備が基本となります。予約プラットフォームへの掲載と写真撮影も、開業前に済ませておくと稼働開始がスムーズです。
- 5運営体制の構築と本業との両立
予約対応・清掃・鍵の受け渡しなど、日常の運営業務を自分でやる範囲と外注する範囲を決めます。本業を持つ会社員が一人で全てをこなすことは現実的でないため、清掃会社・管理代行サービスの活用が一般的です。会社員の実際の運営時間については会社員が、運営に使う時間はどれくらいかで事例を紹介しています。
会社員が直面しやすい失敗パターンと対策
家賃収入を副業として始めた方が後から困るパターンには、いくつかの典型例があります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
収支計算で「家賃だけ」しか見ていない
副業としての家賃収入を試算するとき、月々の家賃収入だけに目を向けると収支が実態より良く見えます。管理費・清掃費・消耗品の補充・プラットフォーム手数料・確定申告のための税理士費用など、定期的にかかるランニングコストを全て洗い出すことが先決です。そのうえで損益分岐点を計算してください。民泊の場合は空室(稼働ゼロ)の月も発生し得るため、最低稼働を前提としたシミュレーションが現実的です。
| 会社員に向いている点 | 見落としやすいコスト・リスク |
|---|---|
|
|
転貸承諾を口頭だけで進める
転貸承諾は、必ず書面で取得することが原則です。口頭で「いいですよ」と言われた段階でリフォームや届出を進め、後になって「そんな話はしていない」となるケースは実際に起きています。承諾書の書式は仲介会社が用意しているケースもありますが、手元にない場合は自分で作成して署名・押印を求めることが確実です。
撤退コストを計算していない
副業として始めた民泊が思うように稼働しない場合、やめるときにも費用がかかります。原状回復・備品の処分・プラットフォームの予約キャンセル対応など、撤退にかかるコストと手順を事前に把握しておくと、判断が早くなります。詳しくはやめるときにかかる費用と、手順をご参照ください。
まとめ:家賃収入副業の始め方チェックリスト
会社員が家賃収入を副業として組み立てるには、「物件取得(または賃借)→ 許認可 → 運営体制」の三段階を順番に整え、税務と就業規則の両面から事前確認を行うことが基本です。賃貸型民泊は購入型と比べて初期資金を抑えやすく、撤退も比較的しやすい選択肢ですが、転貸承諾・届出・収支計画の精度が成否を左右します。
| 確認項目 | 確認内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 就業規則の確認 | 副業・兼業に関する条文と、不動産所得の取り扱いを確認する | 物件探しより先 |
| 転貸承諾の書面取得 | 貸主から書面で転貸・民泊運営の承諾を得る | 契約前 |
| 収支シミュレーション | 損益分岐点となる稼働率を計算し、実現可能性を確認する | 契約判断前 |
| 許認可の申請 | 住宅宿泊事業の届出または旅館業の許可申請を行う | 契約後・開業前 |
| 確定申告の準備 | 不動産所得の申告要件・青色申告の適用可否を税理士と確認する | 運営開始前 |
| 運営体制の外注設計 | 清掃・予約対応の代行先を確保し、本業への影響を最小化する | 開業と同時 |
YADOKARIは、賃貸型民泊の物件探しから転貸交渉・許認可・予約対応・清掃手配までを一括でサポートしています。本業を続けながら始めたいという方に向けて、自分で動く範囲を絞った運営体制を一緒に設計します。
- 給与以外の収入源をつくりたいが、本業の時間は削りたくない方
- 不動産購入の初期資金が大きくなりすぎず、撤退しやすい形で始めたい方
- 許認可や転貸交渉など、手続きの進め方が分からない方
YADOKARIが対応する範囲について
よくある質問
会社員でも家賃収入を得ることはできますか?
はい、一般的に可能です。家賃収入は労働の対価ではなく資産運用の収益であるため、多くの企業の就業規則では副業禁止の対象外とされるケースが多くあります。
ただし就業規則の文言は会社ごとに異なるため、必ず自社の規定を確認するか人事担当者に問い合わせてください。公務員の場合は、国家公務員法・地方公務員法の制限があるため所属先への事前確認が必須です。
家賃収入はいくらから確定申告が必要ですか?
給与所得者(会社員・公務員)の場合、給与所得以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です(所得税)。ただし住民税については、20万円以下でも申告が求められる場合があります。詳細は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
物件を買わなくても家賃収入を得られますか?
はい、賃貸型民泊という方法があります。物件を賃借し、貸主の転貸承諾を得たうえで民泊として転貸することで、購入より少ない初期費用で家賃収入を得られます。ただし転貸承諾の書面取得と、住宅宿泊事業法または旅館業法に基づく許認可が必要です。
民泊として運営する場合に必要な許可・届出は何ですか?
住宅宿泊事業(民泊新法)として運営する場合は都道府県知事への届出が必要です。旅館業(簡易宿所)として運営する場合は市区町村長への許可申請が必要となります。
それぞれ年間営業日数の上限や設備基準が異なります。物件のエリアによっては条例による上乗せ規制がある場合もあります。
うまくいかなかった場合、やめることはできますか?
はい、賃貸型民泊は物件を購入していないため、一般的な賃貸契約の解約手続きを経れば撤退できます。ただし原状回復費用・備品の処分・許認可の廃止届など、撤退時にもコストと手続きが発生します。事前に撤退コストの見積もりをしておくことをお勧めします。
